AMASCからの呼びかけに応えて

2017-10-30

 「ソフィの遺産、世界への贈り物」を四年間のテーマとしたAMASC から、昨年夏イタリアで開催された「聖心会2016年総会」が発した4つの呼びかけを第16回AMASCメリダ大会のテーマとするとの連絡がありましてから一年。4つの呼びかけが「ソフィの遺産」に他ならないと確信して、JASH スタディグループの三分科会と関西支部に、其々の活動の目指したものとその成果に結びつく一つを選んでいただきました。
 世界中の様々なグループからのフィードバックを纏めて参加者全員で分かち合い、講演やディスカッションの理解に役立て、メリダ大会の共有財産としたいというメキシコAMASC の要請に応じたJASHスタディグル―プから、4つの答えがこの度発表されました。
 スタディグル―プ参加が叶わなかった皆様、メリダ大会参加が難しい皆様にもお読みいただければと、ここに掲載いたします。

JASH会長 中山洋子

 

CARD 1 「より人間らしく生きること」 第3グループ

 聖マグダレナ・ソフィアの精神がどのように継承されているのか、創立者の教育の種がどのように結実しているのか、「魂を育てる」という精神の教育を実践し、それぞれの場で聖心スピリットを体現し、活躍していらっしゃる何人かの卒業生を中心に、“LIVE MORE HUMANELY”について掘り下げて考えてみた。

 1.Sr. 渡辺和子 (ソフィア会国15回生、宮代1回生・2016年12月30日死去 享年89歳)
ノートルダム清心女子大学の学長を27年間務める。生き方をつづった著書「置かれた場所で咲きなさい」は200万部を超えるベストセラーとなった。

 2.喜谷昌代さん(みこころ会40回生)
半世紀以上にわたって世界各国で赤十字ボランティアとして活動し、その後日英の障害のある青年の交流プログラム「もみじプロジェクト」を主宰。日本に、重い障害の子供たちが短期滞在できる子供のホスピスのアイディアを紹介し、2016年、「もみじの家」を東京にオープン。キッズファム財団(Foundation for Severely-ill Kids and Their Families)理事長を務める。

 3.Sr. 中出敬子 (宮代10回生・17回生)
40年間、インドのムンバイで障害児教育と教員の養成にあたってこられた。(聖心侍女修道会のシスター)

 4.勝又英子さん (ドシェーン会10回生、宮代18回生)
日本国際交流センター(Japan Center for International Exchange)専務理事。一貫して国際交流の最前線で、裏方として働いてきた。同センターは独立・民間の非営利組織。幅広い国際交流事業を実施している。

5.荘保共子さん(小みこころ会37回生、宮代19回生)
大学卒業後、教会の青年活動の中で日雇い労働者の街、釜ヶ崎の子供たちと出会う。障害の有無、国籍の違いなどに関係なく、誰でも利用できる子供たちの集いの場、遊びと学びの場、生活の場としての「こどもの里」と38年にわたってかかわってきた。さまざまな事情を抱える子供たちと向き合い、愛情をもって彼らの巣立ちを支えている。

 6.金田理恵さん (ドシェーン会23回生、宮代31回生)
エジプト、インドでの赴任生活で、貧困の中で子供たちが教育を受けられずにいる現実、貧困を背景とする病気、火傷、そして差別、搾取、虐待等を目の当たりにし、帰国後「Nefer Gallery」を開設。エジプト、インドの工芸品を日本に紹介販売し、エジプト ミニアの聖心会のシスターが携わる火傷施設、障害者施設など、またインド ハリガオン聖心会ストリートチルドレンのための教育施設を支援している。

  私達は、何回かのミーティング、映画の上映会、講演会などを通して、沢山の皆様の活動に触れた。
 多くの卒業生が、神から、社会から、隣人からなど、様々な呼びかけに応えて、それぞれが置かれた場所、状況において、責任を持って全力を尽くしている。
 どの様な難しい問題に出会っても、神に対する信頼と、隣人に対する愛によって乗り越えている。
 これは、イエスの御心(みこころ)を大切に生きる様にと私達にお示し下さった聖マグダレナ・ソフィアの教えを胸に日々生きていらっしゃるからだと思う。
 卒業生皆が、隣人を大切に、一人一人に愛情を注ぎ、それぞれの場で創立者の教えを実践している。
 そして、それを支援する卒業生同士の絆があり、その輪が広がっている。
 これこそが、総会のテーマの一つである“LIVE MORE HUMANELY”ではないだろうか。

 

CARD 2 「新しい辺境の地に赴くこと」 第2グループ

 この呼びかけのはるか20年近く前に、果敢にも新たな境界の地に赴き試行錯誤を重ね、今もなおこの地の弱き人々の為に地道に活動を続けているJASHの平間保枝さんを紹介したい。
 1998年、バングラディシュ日本大使館でボランティアで大使の通訳、翻訳をしていた彼女は、当時の駐日大使ヘダヤテル・ハク氏の誘いを受け、初めてバングラディシュの首都ダッカから135キロ離れたナラヤンプール村を訪れた。道路は当時も今も整備されておらず、デコボコの泥道を何時間もかかる僻地だった。そこでハク氏から「村は開発から置き去りにされている。教育の支援を」との要請を受けた。貧困に喘ぎ学校へ通えない子供達、土地、家、夫のいないその日暮らしの女性達。この実情を見て、「No」とは言えずに何の経験もないまま、彼女はその要請を受けた。
 ハク氏は貧困から村を救うためのプロジェクトを立ち上げた。村の子供達、女性達の将来を日本に託してこのプロジェクトを「サクラ・モヒラ」と名付けた。「サクラ」は日本の象徴、「モヒラ」はベンガル語で女性の意味である。
 まずは、村の小学校校舎の建設、費用は私財と多少の寄付で賄った。教師の雇用、子供達への制服の支給(服が無くて学校に行けない事が無いように)、栄養不足の子供達へビスケットの支給等。これらも始めは全て自身の持ち出しだった。
 女性達のために縫製の職業訓練所を作り、マイクロクレジット方式で担保なしにお金を貸し、自立を促した。
 これらのプロジェクトを一つ一つ立ち上げ、軌道に乗せるまでには多くの困難があった。初めて見る日本人女性の出現に戸惑いと驚きを隠せない現地の人々。ましてや教育を受けていない事からくる人間不信の人達との直接の活動。初めの頃は、伝わらない真意、信頼への裏切り、繰り返される試行錯誤の中で引き返そうとの思いが何度も去来した。その度に彼女は神様と対話することで、乗り越えてきた。
 今では、この村の小学校からダッカ大学へ進学し、公立校カレッジの教師になる子達も出、奨学生制度も開始した。村の子供達の絵の展覧会を日本で実施もした。
 縫製のプロジェクトは、日本人の目から見た完成度の高いものが出来上がるまで、何度も繰り返し指導を行った結果、ダッカの縫製工場へと発展した。製作された洋服や手織り、手刺繍の施された小物、バッグなど多くの品種を日本で販売している。
 この経験をもとに、村の女性達は自分たちでビジネスを立ち上げるまでに成長した。
 この村は、「日本村」と呼ばれ、小学校も地方政府より公立と認可された。 
 しかし、村にはまだ電気もなく、日本との通信手段はダッカを経由しながらである。
 彼女は、「いつも思考を柔軟に保ち、正しい理解をすることと変化を受け入れるよう」心がけている、と言う。一生懸命やっていれば、何とかなるという確信を実際の行動によって得た。この活動が自分のみに留まらず、次世代に引き継がれて行くことこそ夢のような喜びであると心から思っている。

 

CARD 3 「一つの体として行動すること」 関西支部

 私たちは、16回AMASC世界大会テーマ「ソフィの遺産、世界への贈り物」にそって、講演会の実施や話し合いを続け、学びました。

 まず、私たちの感想として出てきたのは、「聖心の良さはことばで表すことが大変難しい」ということでした。なぜでしょうか。聖心はキリスト教に基づいた宗教教育が成されていますが、それは単に宗教的な情操教育ではなく、魂が揺さぶられるような教育、生き方の軸になる「価値観」にまで響く教育だからではないでしょうか。
 本当の豊かさとは何か、本当に大切なものは何か、という価値観。もちろん、物質的(経済的)な豊かさも生きる上で必要なものですが、過剰な欲求が、紛争や破壊を起こしています。日本人は東日本大震災で大きな破壊に遭遇して、人と人との「絆」の大切さを体感しました。私たちは、聖心の教育の中で、絆、調和、真の豊かさや幸せを学ぶことができました。それは、ソフィの遺産「キリストの聖心(みこころ)のうちに、一つの心、一つの魂で」を礎に、私たちの一人ひとりの心に刻まれているもので、各々が家庭、職場など、どのような現場にいても、一つの精神的な集合体として、活きているのだと思います。私たちがそれぞれの立場で輝くことにより、ソフィの遺産を体現することができるのでしょう。
 これは聖心会設立当時、多くの女子修道会が良妻賢母を育てることを目的にしている中で、ソフィが、裁縫や家政から文学、歴史、算数、博物学、神話学等々に至るまで、あらゆる場面で役に立つ人材を育てることを方針としたことに起因します。ソフィの遺産は私たちの心に刻まれ、一つの精神的な集合体として世に響いているのだと思います。そしてそれが大きな波になるには、多くの卒業生がもっと深く知り、行動を起こすことが必要なのだと思います。
 しかしながら、それを不可能とするものは、無関心、無知、諦め等々ではないでしょうか。昨今私たちは日常生活が多忙になり、こういった意識もついつい忘れがちになっています。同窓生とコミュニケーションをとり、意識的に振り返ることが必要なのだと思います。今年10月、再度講演会を開催し、心を一つにして深めてゆきたいと思っています。

 最後に、関西支部の存在理由は何かを考えました。
 関西には1991年「関西に在住される総ての聖心各校の同窓生の親睦と交流を図り、在学中に学んだボランティア精神を体現する」という目的を持って「関西聖心親睦会 現アンジェラスの鐘」が発足し、今日も活動を続けています。親睦を図る催しを開催するだけでなく、阪神淡路大震災以降は被災者、ホームレス等の支援に始まり、今日、東日本大震災復興支援へと続いています。スタディグループもお手本にしたいと考えています。
 多くの卒業生が、ソフィの遺産「キリストの聖心(みこころ)のうちに、一つの心、一つの魂で」を礎に、小林の丘を登ってくださる機会を作り、「心のふるさと」として会員が集ってほしいと思っています。同じ聖心スピリットを学んだ私たちが、一つの木に寄り添い、AMASCテーマで心を一つにして、社会に役立つことを考え、発信できればと考えています。
 このような活動が今後も継続できますようお力添えをお願いいたします。

 

CARD 4 「静けさを造りだすこと」 第1グループ

静けさを大切にすること まとめ

私達のグループは聖マグダレナ・ソフィアのお言葉が記された日めくりカレンダーを和訳することにより創立者の教えを改めて勉強する幸福な機会を得ました。
聖マグダレナ・ソフィアの教えの元に育まれた私達はこのカレンダーのそこここに彼女の強いメッセージを読み取り激励されました。特に静けさを造り出して神の声を聞き、神を見出していくということがいかに大切かを、そのご生涯に重ね合わせてみるにつけ学びました。 

・「自分の心の中に沈黙の砂漠を作りましょう。主は近くにおられます。神の声に耳を傾けましょう」沈黙の中で私たちが個々に内省し神の声を聞き、神との対話を繰り返すための内的生活を深めることが大切と考えます。その内的生活の静けさの中ではじめて聖霊の働く場が作られ聖霊の導きにより神の存在を深く信じることができるようになるのです。 

・「祈りとそれに伴う内省があなたの道をきめてくれます」
祈りとは神の前に黙し、聖霊の働きに身をゆだねて、神の存在を確信していくことにつきます。聖マグダレナ・ソフィアはそのご生涯を通して私達にその大切さをご自身の姿をもって示してくださいました。常に聖霊の力により内なる力を強めるように祈り、たゆまぬ努力をなさったお姿が印象的でした。

静けさの中の祈りが心の安定、心の自由をあたえてくれるのです。忙しい日常の中にわずかな時間を見つけて静けさの中に自分と向き合う時間を造り祈ることが、神の声を聞き、聖霊の働きを願うこととなります。聖霊によって強められた力は神への強い信仰をもたらします。信仰によって神の深い愛を受け入れることができるようになりそのことが他者へ愛をもって接することができるという愛の連鎖をもたらすと考えます。
膨大な情報と目まぐるしい技術革新の中で生きる私たちにとって、静けさを造りだすことは困難ですが非常に大切なことです。日常に追われる日々の生活の中にも静かに自分と向き合う時間を造り出す努力をしたいと思います。そのことを経て初めて私たちは他者に愛をもって接することができるようになるのではないでしょうか?

無題